猫の尿石症の原因とは?主な症状や治療法・予防法について解説
尿石症は猫がかかりやすい病気の一つですが、原因について詳しく知らない方も多いでしょう。猫の尿石症には、食生活や生活習慣、猫自身の体質などが深く関わっています。
本記事では、猫の尿石症の原因や症状、治療法や予防法について解説します。愛猫の尿石症を予防したい・対策方法が知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。
猫の尿石症とは
尿石症とは、尿の通り道である尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に「尿石」と呼ばれる石ができる病気です。
尿石は尿中のミネラル成分が増えたり、尿のpHが乱れたりすることで発生します。大きさは砂粒サイズのものからクルミ大くらいのものまでさまざまで、尿石ができる場所によって「腎結石」「尿管結石」「膀胱結石」「尿道結石」の4つに分類されます。
尿石症は猫下部尿路疾患の代表的な病気の一つであり、珍しい病気ではありません。しかし、重症化すると命に関わることもあるため、早期発見・早期治療が大切です。
猫の尿石症の主な種類
シスチン結石や尿酸塩結石など、結石の種類は複数あります。このうち、特に発症件数が多いのは「ストルバイト結石」と「シュウ酸カルシウム結石」です。
それぞれ形成されやすい条件や治療法が異なるため、各結石の特徴を知っておきましょう。
ストルバイト結石症
リン・マグネシウム・アンモニアから構成される結石で、尿のpHが「アルカリ性」に傾くとできやすくなります。
尿を酸性に傾けると溶けるため、療法食や投薬によるpHバランスの調整が有効です。発症年齢は1~6歳が多く、犬とは異なり、無菌性での発生がほとんどで、食事の影響が大きいといわれています。
シュウ酸カルシウム結石症
シュウ酸とカルシウムから構成される結石で、尿のpHが「酸性」に傾くとできやすくなります。
一度結晶化すると溶かすことはできず、尿に混じって排出されるのを待つか、外科手術によって取りのぞく必要があります。好発年齢は7~11歳程度の中~高齢期です。
猫の尿石症の症状
尿石症の猫には、トイレの回数が増える、トイレでじっとしている、尿に血が混じっている、尿の量が少ないなどの様子がみられます。
猫によっては、トイレ以外の場所で粗相をしてしまったり、排尿時に痛みを感じて鳴いたりすることもあるでしょう。
また、感染を伴う場合は発熱や食欲不振、元気消失などの症状が現れます。さらに、尿に混じって排出された結石が猫砂やトイレシートの上でキラキラ光って見えることもあります。
なお、尿石症の症状で最も注意が必要なのは、結石が尿路に詰まる「尿道閉塞」です。尿がまったく出せなくなると、膀胱破裂や急性腎不全、尿毒症を起こす可能性があり非常に危険です。特にオス猫は尿道閉塞のリスクが高いため、注意しなければなりません。
猫の尿石症の主な原因5つ
猫の尿石症はさまざまな要因によって発症します。ここでは、猫の尿石症を引き起こす主な原因を5つに分けて解説します。
ストレス
ストレスがかかると免疫力が下がり、尿石症にかかりやすくなります。引っ越しや来客、工事の音、同居猫との不仲、トイレが気に入らないなど、猫がストレスを感じる場面は多々あります。
繊細な性格の猫は環境の変化や季節の変わり目に体調を崩しやすいため、特に注意が必要といえるでしょう。
細菌感染
尿道から膀胱に細菌が侵入し、炎症によって尿石症を引き起こすこともあります。
尿石症と膀胱炎は密接な関係があり、膀胱炎によって尿石症を発症したり、反対に結石が刺激になって膀胱炎を起こしたりするケースも珍しくありません。
細菌が侵入すると尿がアルカリ性に傾くため、ストルバイト結石ができやすい状態になります。
飲水量が少ない
飲水量が少ないと尿は濃くなり、尿石症のリスクが高まります。
もともと猫は水の少ない乾燥地帯に生息していたため、少量の水しか飲みません。しかし、飲水量が少ないと尿中のミネラル濃度が高くなり、結石ができやすい環境になってしまいます。
特に寒い時期は飲水量が減りやすく、普段よりも尿石症を発症しやすいといえるでしょう。
排尿回数が少ない
膀胱に尿が溜まっている時間が長いほど尿中のミネラル濃度は高くなり、結石ができやすくなります。
猫はとてもデリケートな動物で、トイレが汚れていたり、トイレの設置場所が気に入らなかったりすると排泄を我慢してしまうため、トイレの環境には特に注意しましょう。
不適切なご飯・おやつ
尿石症の発症には、食事の内容も大きく影響します。マグネシウムが多い食事は尿のpH酸性度をアルカリ性に傾けるため、ストルバイト結石ができやすくなります。
また、シュウ酸カルシウム結石はタンパク質と脂肪分が多い食事で作られやすいといわれています。
なお、栄養価が高すぎるフードは猫の肥満の原因になりますが、太っている猫は動きたがらないため、飲水量や排尿回数が少なくなり、尿石症のリスクが高い傾向があります。
尿石症になりやすい猫の特徴
スコティッシュ・フォールドやヒマラヤン、アメリカン・ショートヘアは、シュウ酸カルシウム結石ができやすい猫種といわれています。
尿石症は性別に関係なく発症しますが、重症化しやすいのは尿道が狭く結石が詰まりやすいオス猫です。
また、太っている猫は脂肪で尿道が圧迫されるため、結石による尿路閉塞のリスクがより高いといえるでしょう。
猫の尿石症の治療法
尿石症をそのままにしておくと、尿路内の結石は徐々に増えていきます。
尿路閉塞を起こした場合は猫の命に関わるため、治療はできるだけ早く受けることが大切です。
猫の尿石症の治療方法には、主に以下のようなものがあります。
療法食や薬で結石を溶かす
軽度の尿石症の場合は、療法食や薬で治療を行います。
尿石症の猫向けに作られた療法食は、尿のpHを調整したり、水分摂取量を増やしたりする工夫がされているため、結石の溶解や自然な排出をサポートしてくれます。
療法食の効果を最大限発揮させるためにも、食事療法中はトッピングやおやつなど、療法食以外のものを与えるのは避けましょう。
抗生剤で細菌増殖を抑える
細菌感染による尿石症では、尿路内の細菌を減らすため抗生剤を投与します。炎症が強い場合は、抗炎症薬を併用することもあるでしょう。
なお、尿石症は再発しやすい病気であるため、症状が消えたからといって自己判断で投薬を止めてはなりません。薬剤耐性菌を防ぐためにも、抗生剤は獣医師に指示された期間しっかりと与え切りましょう。
外科手術で結石を取りのぞく
療法食や薬などの内科的治療が難しい場合は、外科手術で結石を取りのぞきます。手術は全身麻酔下で行うため、高齢の猫や持病がある場合は慎重に判断しましょう。
また、尿道が狭く尿路閉塞を繰り返す猫では、尿道を短くする手術を行うこともあります。
カテーテルで結石を膀胱へ押し戻す
尿道閉塞を起こしているときはカテーテルを使って閉塞を解除し、膀胱内の尿を排出します。
なお、膀胱内に長時間尿が溜まっていた場合、一時的に排尿障害を起こしているケースも少なくありません。その場合はカテーテルを数日間入れたままで治療し、カテーテルを猫が抜き取ったり舐めたりしないように、首にはエリザベスカラーを装着します。
猫の尿石症の予防法
尿石症を起こす猫は多いため、日頃の予防が肝心です。猫に負担がかからない程度に、できることから始めてみましょう。
ここでは、猫の尿石症を予防する主な方法を解説します。
水を飲ませる工夫をする
ウェットフードやスープ、猫用ミルクなどを活用して、愛猫の水分摂取量を増やしましょう。
水皿は異なる形状のものを猫の通り道に複数設置し、いつでも新鮮な水を飲めるようにしておくこと。猫は流れる水を好む傾向があるため、流水タイプの給水器を使うのもおすすめです。
冬場はどうしても飲水量が少なくなるため、冷たい水ではなくぬるま湯を与えると良いでしょう。
トイレを我慢させないようにする
猫がこまめに排泄できる環境作りも大切です。トイレは頻繁に掃除をし、常に清潔な状態を保っておきましょう。
トイレの数は「猫の数+1」が理想です。多頭飼いの場合はトイレの争奪戦になりやすいため、 なるべく複数のトイレを設置しましょう。
また、トイレへの導線は複数確保してあげると、猫がトイレを我慢しづらくなります。
食事量をコントロールして肥満を防ぐ
愛猫の適正体重を知って、食事量をコントロールしましょう。
肥満は尿石症のリスクを高めるため、普段から太らせないよう心がけることが大切です。人間の食べものや高カロリーな食事、おやつのあげすぎは避け、欲しがるだけ与えるのは止めましょう。
ダイエット中はこまめに体重を量って、体重の減りをチェックするのがおすすめです。
ミネラルバランスが良いフードを与える
愛猫に与える食事は、ミネラルバランスに配慮されたものを選びましょう。特にマグネシウム、リン、カルシウムの含有量が多すぎないか、よく確認してください。
結石ができやすい体質の猫には、再発防止用の療法食や下部尿路の健康に配慮したフードがおすすめです。サプリメントやトッピングなどを与える場合は、食事全体のミネラルバランスが崩れないように注意しましょう。
まとめ
猫の尿石症は、一度発症すると再発する可能性が高い病気です。愛猫の尿石症リスクを下げるためにも、ぜひ今回紹介した予防法を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
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購入をご希望の場合は、ぜひかかりつけの動物病院までお問い合わせください。
猫用アンチストルバイト
ストルバイト尿石症の栄養管理のため、ミネラル、アミノ酸などの含有量を調整した食事です。