猫の療法食とは?目的や主な種類、与える際の注意点と食べないときの対処法

猫の療法食

数あるキャットフードのなかでも、「療法食」は特別な特徴を持った食事です。そのため、どんな種類があるのか気になる方も多いでしょう。

本記事では、猫の療法食の目的や主な種類、与える際の注意点や食べないときの対処法を解説します。最後まで目を通せば猫の療法食について正しい知識を得ることができるため、「療法食を適切に使いたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。

監修獣医師

高橋 宏実
獣医師・ペット栄養管理士

麻布大学 獣医学部 獣医学科卒業。東京都内の動物病院で臨床医として勤務。
その後、獣医師として栄養学をより深く学ぶことで、犬猫の健康を臨床医時代とは違う視点からもサポートできるのではと考え現在に至る。毎日欠かさず動物関係のSNSをみることで日々癒されている。

猫の療法食とは

猫の療法食

特定の病気や健康状態の猫に対して、獣医師が治療の一環とし使用する食事を「療法食」といいます。猫の療法食は栄養成分の量や比率が調整されており、病気の治療や再発防止のサポート、または進行を遅らせる補助としての役割があります。

猫の病気のなかには食事管理が必要なものも多くありますが、病気に合った適切な栄養の食事をペットオーナーさんが用意するのは現実的ではありません。療法食は食事管理が必要な猫の主食として与えられるフードであり、猫の健康管理に役立つ特別な食事といえるでしょう。

予防目的で与えてはいけない

療法食は、「なんとなく体に良さそうだから」「猫の病気を予防したいから」などの理由で与えてはいけません。

療法食はあくまで病気の治療や再発防止などの補助として病気の治療や再発防止などの補助として使用する食事であり、健康な猫にとっては栄養が不足していたり、反対に多すぎたりする場合があります。安易に与えた場合、かえって猫が体調不良に なってしまう可能性も考えられるため注意しましょう。

猫の療法食の主な種類6つ

猫の療法食の主な種類

ひとくちに療法食といっても、その種類や特徴はさまざまです。それぞれの療法食の特徴をよく理解し、愛猫の病気治療のサポートや健康管理に役立てましょう。

ここでは、猫の療法食のうち一般的に広く利用されている種類6つ とその特徴について解説します。

種類①腎臓・心臓疾患用

腎臓・心臓疾患用の療法食は、リンやタンパク質、ナトリウムの含有量が制限されています。また、体内での利用効率が良い高品質なタンパク質を使用しているため、余分な老廃物の産生を防ぎます。

なお、犬の療法食では腎臓疾患用と心臓疾患用の2種類に分かれていますが、猫の場合は一つの療法食で両方の疾患をカバーしているものがほとんどです。

種類②消化器疾患用

消化器疾患用の療法食は、低脂肪かつ消化性に優れた原料を使用しています。食物アレルギーに配慮し、タンパク質には新奇タンパクや加水分解タンパクを利用。食物繊維の量を調整することで、スムーズな便の排出をサポートしてくれます。

また、消化器疾患用の療法食は一般的なフードにくらべてミネラルが多いため、下痢や嘔吐によって失われたミネラルの補給にも役立ちます。

種類③尿路結石症用

尿路結石症用の療法食はカルシウムやマグネシウム、リンなどのミネラルが調整されており、ストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石の治療の補助・予防に有効です。

なお、尿路結石症用の療法食には主に溶解用と再発防止用の2種類がありますが、いずれも結石の産生を防いだり、体外への自然な排出をサポートしたりする効果があります。

種類④食物アレルギー用

食物アレルギー用の療法食には、猫がアレルギーを起こしにくい加水分解タンパク質や新奇タンパク質、精製したアミノ酸類などが使用されており、食物不耐症やアレルギーによる消化器症状の改善をサポートしてくれます。

また、アレルギーによる皮膚炎の改善として、炎症を抑える作用があるオメガ3脂肪酸を配合。皮膚・被毛の健康をサポートします。

種類⑤肥満・体重管理用

肥満・体重管理用の療法食は高タンパク・低カロリー・低脂肪で、猫本来の健康的な代謝を保ちつつ、効率的な減量ができます。食物繊維のバランスを調整しているため、ダイエット中でも満腹感が続きやすいのが特徴です。

メーカーにもよりますが、肥満の猫は結石症のリスクが高いため、ミネラルバランスに配慮された製品も多いでしょう。

種類⑥糖尿病用

糖尿病用の療法食は、食後の血糖値上昇をゆるやかにするため、低炭水化物・高タンパクに作られており、原料には糖の吸収速度が遅いものを使用しています。

血糖値の急上昇を防ぐため、可溶性食物繊維と不溶性食物繊維のバランスが調整されており、肥満や肝リピドーシスへの対応が必要な場合も活用できます。

猫の療法食はどこで購入する?

猫の療法食はどこで購入

療法食を販売する店舗・ネットショップは複数ありますが、基本的にはかかりつけの動物病院で購入しましょう。療法食はメーカーや製品によって栄養成分の量や比率が違うため、愛猫にぴったり合うものを獣医師に選んでもらう必要があります。

獣医師から指示されたものを動物病院で購入すれば、きちんとした栄養指導のもと給餌ができるでしょう。また、ネットで購入できる療法食のなかには、並行輸入品が混ざっていることもあります。

並行輸入品の療法食は正規品よりリーズナブルに販売されていますが、品質や管理レベルに不安があり、おすすめできません。

メーカー本社の認証を受けていないため、健康トラブルなどが起こっても自己責任であることを考えると、購入は避けたほうが良いといえるでしょう。

猫に療法食を与えるときの注意点

猫に療法食を与えるときの注意点

初めて猫に療法食を与えるときは、どんなことに気をつけたらよいいか不安を感じる方も多いでしょう。

ここでは、愛猫の食事療法をスムーズに行うため、療法食を与えるうえで事前に知っておきたいことやフードの切り替え方について解説します。

獣医師の指示のもとで与える

猫の療法食は、栄養成分や含有量がそれぞれ特別なバランスに調整されています。そのため、療法食を与えるかどうかの判断は獣医師が行う必要があり、飼い主の自己判断で与えてはいけません。

たとえ過去に同じような症状で療法食が必要だと診断されていたとしても、安易に与えるのは危険です。療法食は必ず獣医師の指導のもとで、正しく与えるようにしましょう。

フードの切り替えには時間をかける

猫は警戒心が強いため、急にフードを切り替えてしまうと食べてくれるまで時間がかかることも少なくありません。

まずは今までのフードを少量減らし、そのぶん療法食を混ぜ込みます。食いつきや体調不良等の問題がなければ、1週間~10日ほどかけて療法食の割合を増やしていくようにし、猫に負担がかからないよう配慮しましょう。

切り替え中はよく様子を観察する

フードの切り替え中は、愛猫に変わった様子がないかよく観察しましょう。時間をかけて切り替えても、場合によっては下痢や嘔吐などがみられたり、急に食べなくなったりするケースもあります。

フードの切り替えによるトラブルは数日たてば落ち着くことが多いですが、なかなか元に戻らないようであれば動物病院に相談しましょう。

療法食を止めていいタイミング

療法食を止めていいタイミング

療法食が必要だと診断されたからといって、この先ずっと続けなければいけないわけではありません。獣医師の判断によりますが、治療が成功し療法食の必要が無くなれば、経過観察のうえ少しずつ一般のフードに切り替えられる場合もあるでしょう。

ただし、猫の体質や病気によっては継続的に与えなくてはいけなかったり、一度落ち着いた症状がぶりかえしたりする可能性もあるため、「もう大丈夫だろう」と自己判断で止めてはいけません。療法食を止めるタイミングは、あくまで獣医師の判断にゆだねるようにしましょう。

猫が療法食を食べないときの対処法5選

猫が療法食を食べないときの対処法5選

猫が療法食を食べてくれない場合、どうすればいいか悩んでしまいますよね。一般的に療法食はその他のフードより嗜好性が低いため、普段から食へのこだわりが強かったり、食べムラがあったりする猫では、療法食を食べないことも珍しくありません。

ここでは、猫が療法食を食べないときに試してほしい対処法を5つ紹介します。

温める

まずは療法食を温めて、猫の食欲を刺激しましょう。冷えたフードはにおいが少なく食欲もそそられませんが、適度に温めることで猫の嗅覚が刺激されます。療法食に飽き始めたときも、温めれば再度興味を示してくれやすくなります。ウェットフードはもちろん、ドライフードも、電子レンジや湯せんを使って35~39℃程度に温めてあげましょう。

ふやかす

噛む力が弱い老猫や体力が落ちた猫の場合、ドライフードだと固くて食べ疲れてしまう可能性があります。そんなときは猫ができるだけ楽に食べられるよう、ぬるま湯やスープ、ペット用ミルクなどでフードをふやかしてあげると良いでしょう。

なお、ふやかすとフードの栄養成分が外に流れ出るため、水分は捨てずにそのまま与えてください。

トッピングをする

グルメな猫の場合、療法食だけではどうしても食べてくれないこともあるでしょう。基本的に療法食は単体で与えるのが望ましいですが、療法食と同じ栄養特性のおやつや一部の食べものであれば一緒に与えても良い可能性があります。

ただし、療法食にトッピングをする際は療法食の栄養バランスが崩れないよう、必ず獣医師に確認のうえ与えましょう。

好物のにおいをつける

においを嗅いだだけで止めてしまう場合は、かつおぶしや煮干しなど、猫が好きなもので香りづけをしましょう。猫は嗅覚が優れているため、わずかでも好きなにおいがついたフードは興味を示しやすくなります。

香りづけ用の食べものはお茶パックやネットに入れてから療法食の袋に混ぜますが、水分が多いものは傷みやすいため避けてください。

メーカーやタイプを変えてもらう

どうしても療法食を食べてくれないようであれば、別のものに変更できないか動物病院に相談してみるのも一つの方法です。

同じ病気を対象にした療法食でも、味やにおいはメーカーごとに異なります。嗜好性が高い缶詰やパウチタイプに変えてみることですんなり食べてくれることも多いため、愛猫の好みに合ったものを探してみましょう。

まとめ

まとめ

療法食は正しく活用すれば、高い効果が期待できる特別なキャットフードです。しかし自己判断で給餌を止めたり、市販品を購入して与えたりすると、かえって猫の健康を害する恐れがあるため、取り扱いには注意しましょう。

猫用の療法食をお探しなら、ぜひSANIMED(サニメド)をご検討ください。

サニメドはヨーロッパを始めとした、世界中で愛用されている療法食ブランドです。フードは最新の栄養学に基づいてレシピを組んでおり、安全な原材料を使用。人工添加物を使用していないのも、安心して続けられるポイントです。

サニメドではさまざまな疾患・状態に対応できるよう複数のラインナップを揃えているため、ご検討の際はかかりつけの動物病院にてご相談ください。