犬の尿石症の症状は?主な原因や治療法・予防法を解説

犬 尿石症

愛犬が繰り返しトイレに入ったり、尿に血が混じっていたりする場合は、尿石症の疑いがあります。犬の尿石症は珍しい病気ではありませんが、重症化すると命に関わることもあるため注意が必要です。

本記事では、尿石症の原因や治療法、予防・対策について解説します。尿石症とはどんな病気か詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

犬の尿石症とは

犬の尿石症

尿石症とは、尿中のミネラル成分が結晶化し、腎臓や尿管、膀胱、尿道に結石ができる病気です。

結石が存在する部位によって、「腎結石」「膀胱結石」「尿管結石」「尿道結石」と疾患名は変わりますが、いずれも結石が原因でさまざまな症状を引き起こします。

なお、結石にはストルバイト結石、シュウ酸カルシウム結石、シスチン結石、尿酸塩結石、リン酸カルシウム結石などの種類があります。なかでも多いのは「ストルバイト結石」と「シュウ酸カルシウム結石」で、それぞれできやすい年齢・犬種が異なります。

犬の尿石症の症状

犬の尿石症の症状

尿石症の症状は、結石ができた場所によって異なります。

腎臓結石の場合、痛みはほとんどなく無症状の場合が多いでしょう。ただし、腎臓のなかで大きくなりすぎてしまうと腎機能が低下し、腎不全を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

膀胱や尿管、尿道に結石がある場合は、主に頻尿や血尿、排尿時の痛みで陰部を気にして舐めるなどの様子がみられます。発熱や食欲不振、嘔吐など全身的な症状がみられるケースもあるでしょう。

また、結石が尿路に詰まると尿が出せなくなり、膀胱破裂や腎機能障害、尿毒症によって重篤な状態になる可能性もあるため、早急な治療が必要です。

犬の尿石症の主な原因6つ

犬の尿石症の主な原因6つ

尿路結石は、食生活やストレス、細菌感染などさまざまな要因によって作られます。

結石の種類によって発生する条件は異なりますが、ここでは犬の尿石症の主な原因を解説します。 

細菌感染

尿路がブドウ球菌などのウレアーゼ産生細菌に感染すると、ストルバイト尿石症を引き起こします。

ストルバイト結石はアルカリ性の環境で発生しやすく、体外から尿道を介して侵入した細菌が膀胱内で増殖、尿のpHがアルカリ性に傾くと形成されます。

犬の尿石症は膀胱炎などの感染に伴って起きることが多く、ストルバイト結石の7割は細菌感染が原因です。

水分不足

水分が不足すると、尿が濃くなって結石ができやすくなります。特に冬場は寒さや運動量の低下から飲水量が少なくなるため、尿石症に注意が必要です。

なお、水分摂取量が少ないと腎臓にも大きな負担がかかります。尿量が少ないことで尿路内に侵入した細菌を排出しにくくなり、膀胱炎のリスクも高まります。

ストレス

ストレスによって免疫力が下がると、尿路感染症による尿石症を起こしやすくなります。

運動不足やスキンシップ不足、環境や家族構成の変化など、犬がストレスを感じる要因は複数あります。犬のストレスサインは見分けるのが難しいものもありますが、放っておくと尿石症をはじめ、さまざまな病気にかかりやすくなるため、なるべく早く対処してあげましょう。

トイレ回数が少ない

排尿を我慢していると、尿中のミネラル濃度が高まり尿石ができやすくなります。犬がトイレを我慢する理由としては、トイレの場所が気に入らない、動くのがおっくうなどが挙げられます。

また、留守番中にトイレを我慢する、外でしかトイレをしないといった場合も尿石症を引き起こしやすいため、注意が必要です。

不適切な食事・おやつ

ミネラルの過不足やビタミン不足、タンパク質の過剰摂取など、不適切な食事・おやつは尿石症を引き起こす可能性があります。

マグネシウム、カルシウム、リン、尿酸などのミネラルは食事から摂取する必要がありますが、これらの摂取バランスが崩れるとミネラル分が濃くなりすぎて結晶化し、腎臓や膀胱、尿管、尿道内で結石になります。

ホルモンの過剰分泌や代謝異常

尿石症は、先天的な門脈体循環シャントや代謝異常、慢性の肝障害によって発症することもあります。これらの病気によって血液中のアンモニア濃度が高くなると、尿酸アンモニウムで構成された尿酸塩結石ができやすくなるでしょう。

また、上皮小体ホルモンが過剰に分泌されると、リン酸カルシウム結石が形成される原因になります。

尿石症になりやすい犬

尿石症になりやすい犬

尿石症には複数の種類がありますが、それぞれ犬種や性別、年齢によってなりやすさが異なります。ここでは、尿石症になりやすい犬の特徴と注意が必要な結石について解説します。 

犬種

尿石症になりやすい犬種には、ダックスフンド、ミニチュア・シュナウザー、シー・ズーなどが挙げられます。また、ダルメシアンは尿酸塩結石の発生頻度が特に高い犬として知られています。これらの犬種は先天性の代謝異常や尿石症に関わる病気を持つことがあり、他の犬種に比べて結石ができやすいといわれています。

さらに、ヨークシャー・テリア、トイ・プードル、マルチーズ、ポメラニアン、ビション・フリーゼなどの犬種も結石ができやすい傾向があります。

性別

尿石症のうち、ストルバイト結石はメスに多く発症します。ストルバイト結石のほとんどは、細菌感染による炎症が原因です。メスは尿道が短いため細菌が膀胱内に侵入しやすく、オスよりも膀胱炎になりやすい傾向があります。

一方、シュウ酸カルシウム結石 はオスに多くみられる尿石症です。オスは尿道が狭いため、結石が尿道に詰まって起こる尿路閉塞もよくみられます。

年齢

尿石症は主に2~10歳までに発症しますが、結石の種類によって発症しやすい年齢は異なります。

5歳未満の若い犬では、「ストルバイト結石」による尿石症や「尿酸塩結石」など遺伝的な因子が関与している尿石症が多くみられます。

一方、5歳以降の中年齢以降は、「シュウ酸カルシウム結石」による尿石症を起こしやすい傾向があります。

犬の尿石症の主な治療法を解説

犬の尿石症の主な治療法

尿石症と診断された場合は、結石の種類や病状に適した治療を受ける必要があります。犬の尿石症を治療する方法には、大きく分けて「食事療法」「薬物療法」「手術療法」の3つがあります。ここでは、犬の尿石症の具体的な治療法を解説します。

療法食や薬で結石を溶解

尿を酸性化する療法食や薬を使って、尿路内の結石を溶かします。尿石症用の療法食は水を多く摂らせる工夫がされているものもあり、結石の自然な排出を助けてくれます。

食事療法は主にストルバイト結石、尿酸塩結石、シスチン結石など溶解できる結石に対して行いますが、溶かすことができないタイプの結石を排出する際にも効果的です。

抗生剤や消炎剤を投与する

細菌感染による尿石症では、抗生剤や消炎剤を投与します。感染による尿石症の場合、溶かしたそばから新しい結石ができてしまうため、細菌を減らす治療をしなければなりません。

抗生剤による治療は時間がかかるケースも多いのですが、膀胱内の細菌を減らすことで頻尿や排尿時の痛みなどが軽減され、犬の生活の質が向上します。

外科手術で結石を取りのぞく

薬や療法食で溶かせない結石は、外科手術で取り除きます。手術は全身麻酔下で行い、術前には尿検査やレントゲン検査、超音波検査で結石の大きさや数を確認します。

なお尿石症は非常に再発しやすいため、術後は適切な食事管理や生活環境の改善を行い、再発を繰り返さないように注意して生活しましょう。

カテーテルで詰まった結石を押し戻す

尿路閉塞を起こしている場合は、カテーテルを尿道口から挿入して詰まった結石を膀胱に押し戻します。押し戻すことができないときや尿道以外で閉塞しているときは、外科手術に切り替えるケースもあるでしょう。

なお、カテーテルの挿入が難しい場合は、膀胱を直接針で刺して溜まった尿を体外へ排出することもあります。

犬の尿石症の予防・対策

犬の尿石症の予防・対策

犬の尿石症を予防するには、生活習慣や食事に気を付けることが大切です。尿石症は一度発症すると何度も繰り返しかかる可能性が高いため、日頃から予防を心がけましょう。ここでは、犬の尿石症の主な予防・対策方法を解説します。 

水分を十分摂取させる

犬が一日に必要とする水分量は、体重1kgあたり40~60mlが目安です。尿が濃縮されないように、水分は十分摂取させましょう。飲水量が増えると尿量も増え、結石が作られにくくなります。

犬がなかなか水を飲まない場合は、ウェットフードやふやかしフードを活用して、食事から自然に水分補給ができるようにしましょう。水飲み場の数や場所を工夫したり、冬場はぬるま湯を与えたりするのもおすすめです。

排尿しやすい環境を作る

犬のトイレは静かな場所に設置し、常に清潔にしておきましょう。

膀胱内に長時間尿が溜まっていると、尿石症のリスクが高まります。屋外でしか排泄できない犬は結石ができやすくなるため、特に注意が必要です。

なるべく屋内で排泄できるようしつけをし、難しい場合は散歩の回数を増やすなどして対応すると良いでしょう。

栄養バランスの良いフードを与える

ミネラルやタンパク質の過不足を防ぐには、栄養バランスの整った食事を与えることも大切です。

ドッグフードにはさまざまな商品がありますが、特定の栄養素が多かったり、過度に高栄養だったりするものは好ましくありません。

なお、フードを尿石症の予防目的で与えたい場合は、「尿石症サポート」などと書かれた機能性フードを選ぶのもおすすめです。

適度な運動と食事管理で肥満にさせない

肥満の犬は尿石症になりやすいため、太らせないように注意しなければなりません。

脂肪組織で尿道が圧迫されると、尿路閉塞のリスクも高まります。愛犬の適正体重を維持できるよう、日頃から適度な運動と食事管理を心がけましょう。

犬の尿石症の早期発見に役立つ2つのポイント

犬の尿石症の早期発見

犬の尿石症を悪化させないためには、早期発見・早期治療が欠かせません。ここでは、犬の尿石症を発見するために必要な2つのポイントを解説します。

日頃からよく様子を観察する

愛犬に変わった様子はないか、日頃からよく様子をみておきましょう。

特にチェックしたいのは、水を飲む量や排尿回数、尿の色が薄すぎたり濃すぎたりしないかどうかです。元気なときの様子を覚えておくことで、異常があったときにすぐ気づきやすくなります。

定期的に尿検査を受ける

特に変わった様子がなくても、年に1回は動物病院で尿検査を受けましょう。

尿石症をなるべく早く治すには、結石の前段階である「結晶」のうちに治療することが大切です。尿検査は犬に負担がなく受けられるため、積極的な受診がおすすめです。

まとめ

まとめ

犬の尿石症には体質や食生活、排泄環境が深く関わっており、日頃の予防が必要です。ぜひ栄養バランスの整った食事と十分な水分摂取で、愛犬の尿石症対策を行いましょう。

愛犬の尿石症対策を検討している方は、「犬用アンチストルバイト」をお試しください。犬用アンチストルバイトは、下部尿路疾患の犬に与える目的で作られた療法食です。

結石の形成に関わるミネラルのバランスやアミノ酸の含有量を調整し、結石のなかでも発症件数が多いストルバイト結石の治療・予防をはじめ、シュウ酸カルシウム結石の予防にも対応しています。

購入をご希望の方は、ぜひかかりつけの動物病院にて「犬用アンチストルバイトを試したい」とお伝えください。

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犬用アンチストルバイト

ストルバイト尿石症の栄養管理のため、ミネラル、アミノ酸などの含有量を調整した食事です。

監修獣医師

高橋 宏実
獣医師・ペット栄養管理士

麻布大学 獣医学部 獣医学科卒業。東京都内の動物病院で臨床医として勤務。
その後、獣医師として栄養学をより深く学ぶことで、犬猫の健康を臨床医時代とは違う視点からもサポートできるのではと考え現在に至る。毎日欠かさず動物関係のSNSをみることで日々癒されている。