犬のてんかんの原因と症状、治療法や発作の予防法について解説
脳の慢性疾患であるてんかんは、犬が発症することもある病気です。本記事では、てんかんとはどのような病気なのか、主な原因や症状、治療法を解説します。
この記事を読むことで犬のてんかんについて詳しくなり、突然の発作時も正しく対処できるようになるでしょう。てんかん発作を予防するポイントも解説しているため、愛犬がてんかんを持っているという方は、ぜひ参考にしてください。
犬のてんかんとは
犬のてんかんは、脳の神経細胞が過剰に活動することで、発作が繰り返し起こる病気です。通常、脳の神経細胞は規則正しいリズムを保ちながら、電気的に活動しています。しかし、なんらかの原因で電気信号が乱れてしまうと脳が過剰に興奮し、けいれんや意識障害などを引き起こします。
てんかんの大きな特徴は、発作が繰り返し起こることです。発作の間隔は24時間以上あけ、少なくとも2回以上起こることが「てんかん」と診断される条件です。そのため一度発作が起きた、1日に数回発作が起きただけで、てんかんと診断されることはありません。
発作の間隔は犬によって異なりますが、毎日起こる犬もいれば数ヶ月や年に1度の頻度で起こる場合もあります。
犬のてんかんの原因と種類
犬のてんかんは、大きく3つに分けられます。それぞれ原因や発症年齢が異なるため、特徴を覚えておきましょう。ここでは、てんかんの3つの種類について解説します。
特発性てんかん
検査をしても異常が見つからない、原因不明のてんかんです。
脳神経細胞の機能異常などが原因と考えられており、遺伝的素因があるといわれています。特発性てんかんは比較的若い時期に発症するケースが多く、生後半年から6歳くらいまでの犬に多くみられます。
症候性てんかん
脳になんらかの障害が起きたり、脳の一部が傷ついたりして発症するてんかんです。
主な原因としては、脳腫瘍、脳炎、脳出血、水頭症、難産による低酸素症などがありますが、交通事故や転倒など、外部からの刺激によって脳が傷ついたことにより発症するケースもあります。特発性てんかんと違い発症時期はさまざまで、年齢に関係なく発症します。
潜因性てんかん
症候性てんかんが疑われるものの、検査では異常が見つからないてんかんです。
例えば、交通事故で頭に強い衝撃を受けた後に発作がみられたにもかかわらず、その後の検査で異常がみられないケースなどが該当します。症候性てんかんと同じく、年齢に関係なく発症します。
犬のてんかんの主な症状
てんかんの症状は犬によって異なり、意識を失う大きなものから体の一部だけに現れる小さなものまであります。すぐに発作と分からない症状もあるため、普段からよく様子をみておきましょう。
ここでは、てんかんの主な症状を解説します。
全般発作
脳の両側の広い範囲で過剰な興奮が起こる発作です。
発作時は通常意識が消失した状態で全身性のけいれんがみられ、筋肉を突っ張るような動きや、手足をガクガクと震わせる様子などが現れます。場合によっては、空中で犬かきのように手足を動かす「遊泳行動」がみられることもあるでしょう。発作中は失禁してしまうこともあり、回復後もしばらく意識がもうろうとします。
この他に、脳の中では興奮が生じているものの、ふっと力が抜けるような脱力発作もあります。これはすぐに元に戻るためペットオーナーさんがてんかん発作と気づきにくく、発作かどうかの区別が非常に難しくなります。
部分発作
脳の一部のみが過剰に興奮して起こる発作です。発作中も意識はありますが、部分発作から全般発作へ移行した場合は意識を失います。
部分発作の主な症状は、口をくちゃくちゃ動かす、多量のよだれが出る、口や手足がピクピク動くなどが挙げられます。遠吠えのように鳴いたり、落ち着きなく動き回ったりするなどの様子がみられることもあるでしょう。
てんかんになりやすい犬種
特発性てんかんでは、なりやすい犬種が存在します。
てんかんになりやすい主な犬種は、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、シベリアン・ハスキー、ビーグル、シェットランド・シープドッグ、ボーダー・コリー、ダックスフンド、プードルなど。これらの犬種は国内でも人気がありますが、他の犬種に比べると特発性てんかんの発症率が高いといわれています。
犬のてんかんの治療法
てんかん発作が月に1回以上起こったり、1日に何度も繰り返したりする場合は、適切な治療を受ける必要があります。そして、適切な治療を受ければ健康な犬と同じように生活できるケースも少なくありません。
ここでは、犬のてんかんの主な治療法を解説します。
抗てんかん薬の投与(特発性てんかん)
特発性てんかんでは、主に抗てんかん薬の投与を行います。治療の目的は、発作の頻度を多くても「3ヶ月に1回程度に抑える 」ことです。一つの抗てんかん薬で発作が治まらない場合は、複数の薬を組み合わせて治療を行うこともあります。
なお、てんかんは発作のタイプによって適した薬が変わるため、犬に合った薬や使用量を見つけることが大切です。重篤な発作を引き起こさないためにも、抗てんかん薬は用法・用量を守り、獣医師の指示がない限り止めないようにしましょう。
原因疾患の治療(症候性てんかん)
神経学的検査やMRI検査、血液検査などの各検査で、発作の原因疾患を特定します。症候性てんかんは脳のダメージによって起こるため、脳機能が回復すれば発作が出なくなることもあります。
病気によっては完治が難しい場合もありますが、適切な治療を早期に行うことで発作の回数を減らしたり、症状を軽くしたりすることができるでしょう。
犬にてんかん発作が起きたときの対処法
突然てんかん発作が起こると、慌ててしまうペットオーナーさんは多いもの。いつでも冷静な対応ができるよう、発作時の正しい対処法を覚えておきましょう。
落ち着いて様子をみる
てんかん発作中は、犬が頭をぶつけたり高い場所から落ちたりしないように、注意して見守りましょう。屋外やプールの中など危険な場所で発作が起きたときは、すばやく安全な場所に移動します。大型犬で運ぶのが難しい場合などは、周りに危険なものがないか目を配り、できる限り取り除くことが大切です。
特に全般発作では、つい心配になって体をゆすったり話しかけたりしてしまいますが、こうした行動は脳にさらなる刺激を与えることにつながります。意識のない状態で噛まれて怪我をしてしまう可能性もあるため、発作中はむやみに触らないようにしましょう。
発作の状況を詳細に記録する
発作時の様子や長さ、どのような場面で起きたかなど、発作の詳細な状況を記録することも大切です。発作時の状況をまとめておけば、どんなときに発作が起こりやすいか把握しやすくなり、今後の治療方針を決めるうえで大きく役立ちます。手帳やカレンダーに印をつけたり、スマホのメモに残したりするなど、続けやすい方法で記録しましょう。
発作時の様子を動画撮影しておくと、獣医師に状況が伝わりやすくなります。てんかん発作のなかには口頭で説明しにくい症状もありますが、動画があれば獣医師の理解が深まりやすくなり、診断の精度を高めることができるでしょう。
長時間続く・何度も繰り返す場合はすぐに動物病院へ
多くのてんかん発作は数秒から数分でおさまりますが、けいれんが5分以上続いたり、意識が戻らないうちに再度けいれんが起きたりする場合は、すぐに動物病院を受診してください。
このような発作は「てんかん重積発作」と呼ばれており、命にかかわることもある重篤な状態です。治療が遅れると後遺症をもたらすこともあるため、なるべく早く適切な処置を受けるようにしましょう。
犬のてんかん発作の予防法3つ
犬のてんかん発作を予防するには抗てんかん薬が有効ですが、残念ながら発症を完全になくすことはできません。発作の頻度をできるだけ少なくするには、発症のきっかけをなるべく作らないよう、日常生活を工夫することが大切です。
ストレスをかけない
てんかん発作は、強い不安やストレスなど、精神的な要因で起こることがあります。
引っ越しや家族構成の変化、騒音や強い光などは、犬に大きなストレスを与える原因です。犬が毎日リラックスして過ごせるよう、ストレス源はなるべく減らすよう心がけましょう。
夜はゆっくり眠らせる
睡眠不足は脳の疲労を引き起こすため、てんかん発作を誘発します。
室内で暮らす犬は人間の生活リズムに合わせて過ごすため、ペットオーナーさんが夜遅くまで起きていると寝不足になってしまいます。犬が落ち着いて眠れるよう、犬の寝床は静かで体温調節がしやすい場所に設置してあげると良いでしょう。
過度な興奮・刺激は避ける
過度な興奮や刺激はてんかん発作の引き金になるため、なるべく避けましょう。
特にフラッシュのような強い光や金属音、ガサガサというビニールの音などは犬の脳を興奮させます。犬用おもちゃには犬が興奮する音が鳴るものもありますが、てんかんがある犬では避けたほうが安心です。遊びの時間はしっかり決め、犬が興奮しすぎないようにしましょう。
まとめ
犬のてんかんは遺伝や脳の障害によって起こりますが、適切な治療で改善が見込める病気です。愛犬がてんかんを持っている場合は、発作がなるべく起こらないよう、ストレスや睡眠不足に注意して生活させると良いでしょう。また、食事にはてんかん用の療法食を与えるのがおすすめです。
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