【獣医師監修】3つの論文から考える|犬の慢性腎臓病における食事管理とオメガ3脂肪酸の重要性

愛犬が最近水をたくさん飲むようになった、おしっこの量が増えた、食欲が落ちてきたーーーそんな変化は慢性腎臓病のサインかもしれません。
犬の慢性腎臓病(CKD)とは、腎臓の機能が徐々に低下していく進行性の病気です。
腎臓には体内の老廃物を濾過し、電解質のバランスを調整する働きがありますが、一度失われた腎機能は基本的に回復しません。
静かに進行していき、症状に気づいたときにはすでに腎機能の75%以上が失われていることも多いです。
しかし、慢性腎臓病は早期に発見できれば適切な治療や食事管理が可能で、犬の生活の質の維持・病気の進行を緩めることに繋がります。
本コラムでは、犬の慢性腎臓病(CKD)において重要とされる食事療法の考え方について、獣医学的な論文をもとに解説します。
特に、腎臓病用療法食で重視される栄養成分の設計や、サニメド リーナルにも含まれているオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)が、腎機能の維持や病態進行の抑制にどのように関わっているのかを、複数の研究結果をもとに紹介していきます。
慢性腎臓病における食事療法の重要性
腎臓病用の療法食については多くの研究が行われていますが、今回は以下の論文を参考に、慢性腎臓病用療法食のレシピについて紹介します。
参照(1):Evidence-based step-wise approach to managing chronic kidney disease in dogs and cats.(2013)Polzin DJ , Journal of Veterinary Emergency and Critical Care,2013
参照(2):International Renal Interest Society (IRIS) IRIS Guidelines – Chronic Kidney Disease in Dogs
参照(3):Chronic kidney disease in dogs and cats.
Bartges JW , Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice, 2012
犬の慢性腎臓病管理において、食事療法は重要なポイントのひとつです。
腎臓病用の療法食を与えることが、犬の長期生存率と生活の質を向上させる効果的な治療であることが示されています参照(1)。
現在、国際腎臓病学会(IRIS)では慢性腎臓病をステージ1〜4に分類しています。
特にIRISステージ3〜4の犬では、腎臓病用療法食を与えることが標準治療として推奨されています。参照(2)
慢性腎臓病の犬に対して療法食を与えることは、生存期間の延長や生活の質の維持として優れていることが示されています。参照(1,3)
慢性腎臓病で重要とされる食事内容

さまざまな研究をもとに、腎臓病の療法食は通常の食事を比べて以下のようなことに注意してレシピが作成されています参照(1,3)。
①タンパク質の制限
療法食は通常のフードよりもタンパク質含有量が低く、犬では乾物ベースで14〜20%程度になるよう調整されています。
適度にタンパク質を制限することで尿毒症の原因となる窒素代謝物の蓄積を抑えます。
②リンの制限
リンの過剰な蓄積は、他の二次疾患を誘発し病態の進行を加速させてしまいます。
リンの過剰摂取が死亡率を増加させることも研究によって示されていているため、リンの制限は慢性腎臓病の管理において重要なポイントのひとつです。
リンは乾物ベースで0.2〜0.5%になるように調整されています。
③ナトリウムの制限
ナトリウムの含有量は乾物ベースで0.3%以下に制限するよう言われています。
ナトリウムの制限によって血圧管理や腎臓へのストレスが軽減されますが、過度な制限はかえって負荷がかかってしまうため注意が必要です。
④その他栄養の調整
上記以外にもビタミンやカリウムの補充、酸塩基バランスへの配慮など、さまざまな部分で調整がされています。
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オメガ3脂肪酸の役割
慢性腎臓病における食事管理のなかで、ポイントのひとつとなるのがオメガ3脂肪酸の役割です。
以下の研究では、腎臓のほとんどを外科的に摘出した犬21頭を3つのグループに分け、異なる脂肪源(魚油、サフラワー油、牛脂)を添加した食事を給与することでオメガ脂肪酸による腎保護作用について示しています。
参照(4):Beneficial effects of chronic administration of dietary omega-3 polyunsaturated fatty acids in dogs with renal insufficiency.
Brown SA, Brown CA, Crowell WA, et al. , Journal of Laboratory and Clinical Medicine, 1998
魚油にはオメガ3脂肪酸、サフラワー油はオメガ6脂肪酸を豊富に含んでいます。
上記の論文では、犬に異なる種類の脂肪酸を与えることで、オメガ3脂肪酸の腎臓保護作用の有用性について示しています。
研究によって示されたオメガ3脂肪酸による腎保護作用

上記の論文参照(4)から示された脂肪酸による腎臓の保護作用について紹介していきます。
①腎機能の維持・向上
魚油グループの平均糸球体濾過率(GFR)はサフラワー油グループと比較して有意に高値でした。
また、魚油グループでは20ヶ月の試験終了時の腎機能は試験開始時よりも向上していました。
サフラワー油グループでは7頭中6頭で腎機能が低下し、4頭が末期腎不全により安楽死となったにも関わらず、魚油グループで末期腎不全に至った犬は7頭中0頭でした。
②タンパク尿の顕著な抑制
試験期間中のタンパク/クレアチニン比(UPC)は魚油グループで、他のグループと比較して有意に低かったです。
UPCとは、尿の中にどれほどタンパク質が漏れ出ているのかを示したもので、高いほど腎臓へのダメージや病態の進行が疑われる指標です。
③血液検査での数値を低く維持
魚油グループでは血清クレアチニン(Cre)、尿素窒素(BUN)、総コレステロール値、トリグリセリド値が、他グループより有意に低く保たれました。
血液検査で得られるCreやBUNは、高値で腎障害を疑う項目です。
④腎組織の保護
病理組織学的検査により、腎臓へのダメージについて魚油グループでは他のグループよりも有意に軽減されていることが確認されました。
オメガ3脂肪酸が腎臓を保護するメカニズム

魚油補給によるオメガ3脂肪酸の腎臓保護作用のメカニズムとしては、以下が考えられています参照(4)。
- 炎症の抑制:炎症を促進させるプロスタグランジン・トロンボキサン・ロイコトリエンの産生を抑制します
- 血液凝固の抑制:血栓の形成を防ぎ、腎血流を改善します
- 糸球体血行動態の改善:糸球体内圧を低下させ、糸球体濾過を軽減します
- 血圧の低下:全身の血圧を低下させ、腎臓への負担を軽減します
- 抗酸化作用:酸化ストレスを軽減します
- 腎石灰化の抑制:ミネラル沈着を防ぎます
推奨される脂肪酸のバランス
オメガ6脂肪酸の過剰摂取は腎障害を促進する可能性が示唆されています参照(4)。
目安として、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の比率は1:3〜1:5程度が有益と言及されることがあります参照(3)。
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まとめ
犬の慢性腎臓病の管理において、食事療法は重要な治療手段のひとつです。
科学的根拠に基づいた腎臓用療法食は、適切にリンとタンパク質を制限し、オメガ3脂肪酸を豊富に含むものです。
これにより腎機能の低下を遅らせることが期待できます。
とくに、魚油由来のオメガ3脂肪酸は、腎機能の維持やタンパク尿の抑制、腎組織の保護において顕著な効果を示すことが長期的な臨床実験で実証されています。
慢性腎臓病と診断された際は、かかりつけ動物病院の先生とよく相談しながら、生活の質や生存期間に大きく影響する療法食を検討することをおすすめします。
サニメドでは慢性腎臓病にお悩みの犬たちに向けた食事として「犬用 リーナル」をご用意しております。
購入をご希望の方は、ぜひかかりつけの動物病院にてお試ししたい旨をお伝えください。

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慢性腎臓病およびシュウ酸カルシウム結石症の犬に給与する目的で、タンパク質およびリン、カルシウムなどのミネラル成分を調整した食事です。



